前編に引き続き、昨年のU-21欧州選手権に出場したイタリア人選手の今シーズンを振り返ってみたいと思う。今回は期待を裏切るシーズンを送った選手編だ。

前回も挙げたが、スウェーデンで行われたU-21欧州選手権に出場した主なイタリア人は以下のとおりである。

【GK】
コンシッリ(アタランタ)
シリグ(アンコナ→パレルモ)
【DF】
モッタ(ローマ)
アンドレオッリ(サッスオーロ→ローマ)
ボッケッティ(ジェノア)
クリッシト(ジェノア)
ラノッキア(バーリ)
【MF】
アバーテ(トリノ→ミラン)
カンドレーヴァ(リヴォルノ→※ユヴェントス)
マルキージオ(ユヴェントス)
デ・チェッリェ(ユヴェントス)
チガリーニ(アタランタ→ナポリ)
ポーリ(サッスオーロ→サンプドリア)
【FW】
アクアフレスカ(カリアリ→アタランタ→※ジェノア)
バロテッリ(インテル)
ジョヴィンコ(ユヴェントス)
※2010冬のメルカートにおいての移籍

以上のメンバーにおいて、期待を裏切ってしまった選手はコンシッリ、モッタ、アンドレオッリ、アバーテ、デ・チェーリエ、チガリーニ、アックアフレスカ、バロテッリ、ジョヴィンコの9人である。

コンシッリについて、期待を裏切ったと評することに疑問を抱く方もいるかもしれない。確かに他に名前を挙げた選手に比べれば、良いシーズンを送ったといえるだろう。しかしながら、シリグとの評価が完全に逆転してしまった点(スウェーデンではコンシッリが正GKを務めるも、シリグはアッズーリへとステップアップ)、シーズン中に一時期スタメンを外された点を考慮すると、ネガティブな評価になってしまう。極めつけは33節、ローマ戦でのミスだろう。GKはポジションの性質上、ミスが失点に直結してしまう。ローマ戦でのそれが技術上のものなのか、判断を誤ったということなのか、議論の余地はあるだろうが、彼のミスが敗戦に繋がったことは否定できない。チームも降格決定とあって、来シーズンのセリエAでコンシッリが正GKを務めるのは非常に難しいだろう。

昨シーズン、冬のメルカートにてウディネーゼからローマにレンタルで移籍したモッタは、非常に良いパフォーマンスを見せ、代表招集、ローマへの完全移籍と大きく飛躍を遂げた。しかし今シーズンは、非常に厳しい状況に立たされている。現在、右SBのポジションは完全にカッセッティのものである。恐らく左SBのリーセが非常に攻撃的な選手の為、右にはより守備力のある選手を起用したいという、ラニエリの意向もあるのだろう。しかしながら、カンピオナート最後の10試合での出場が2というのは、やはりモッタへの信用があまりないということを示しているのだろう。

同じローマのDF、アンドレオッリはより厳しい。ローマのCBの序列において、ブルディッソ、フアン、メクセスに次ぐ4番手扱いとなっており、カンピオナートの出場試合数は僅かに8試合。完全にカップ戦要員としての扱いである。昨シーズン、レンタル先のサッスオーロで活躍し、アッズリーニでも良いパフォーマンスを見せレンタルバックして来ただけに、今シーズンの活躍は物足りないものとなってしまった。

念願のミラン復帰を果たしたアバーテ。レオナルドは右SHが本職のアバーテを、ひとつ下のポジションである右SBで起用している。SBで起用され始めた当初、この采配を大きな驚きと共に受け取った人も多いはずだ。恐らくこの抜擢に対して、アバーテは期待以上の働きで応えたといえるだろう。継続的にスタメン出場している事実からもそれは伺える。しかし、あくまでそれは予想された働きよりは良いというレベルであり、ミランクラスのクラブに求められるSBの働きではない。あまりにも守備の面でのお粗末さが目につき、失点の決定的な原因となることも少なくない。攻撃的なキャラクターを発揮できた上での、守備面のマイナスというのは目をつぶれないこともない。しかしながら、今シーズンのアバーテは攻撃面での貢献もあまりできていない。スピードを活かした突破を武器とする選手のサイドバック起用は疑問に思える。

デ・チェーリエも期待されている選手である。シエナよりレンタルバックした昨シーズンは、一時左SBのポジションをつかんだかに思えたが、ケガによる離脱の為に完全に自分のものとすることができなかった。迎えた今シーズン、ポジションを争うライバルがモリナーロから、より実績のあるグロッソへと代わった。フェラーラ監督時代はグロッソがレギュラーであったが、ザッケローニ就任以降は左SBのファーストチョイスとして試合に出る機会が増えている。しかしこの起用は決してポジティブなものではないといえる。つまるところ、リヨンから補強してきたグロッソの出来が悪かったことによる起用なのである。前出のアバーテ同様、デ・チェーリエも本来はひとつ前のポジションの選手である。ポジションをひとつ下げての起用は、基本的に攻撃力を買われてのものである。現代サッカーにおいて、SBの攻撃面での役割は非常に大きい。デ・チェーリエはその役割を果たしているとは言い難い。この役割を継続的に果たせるようになってこそ、ユヴェントスというクラブのSBのポジションをつかんだといえるだろう。

来シーズンのヨーロッパリーグ出場権を得たナポリ。シーズン前の補強を考えれば、この結果は妥当なものである。そんなチームにおいて、アタランタより移籍してきたチガリーニにとっては満足のいくシーズンとはならなかった。チガリーニは中盤センター、低めのポジションからゲームをつくる、いわゆるレジスタタイプの選手である。ドナドーニが監督を務めた7節までは、レギュラーとして試合に出ていた。しかしこの間、チームは13失点で2勝1分4敗と結果を残すことができなかった。8節以降指揮を執るマッツァーリは守備ブロックを再構築することから始めた。中盤のセンターをガルガーノ、パツィエンツァというしっかりと守れる選手で構成することを選んだのである。結果的にこの采配は的中し、マッツァーリ就任後31試合で30失点の13勝13分5敗と好成績を収めている。チガリーニは監督交代によってポジションを失ってしまうこととなった訳だが、チーム内で最も途中出場をしている選手であり、攻撃のオプションとして重宝されている。チガリーニがスタメンとして不可欠な選手になる為には、さらに自分の持ち味を発揮し、攻守両面でチームに多大な影響を与えられるようにならなくてはならない。おそらくプレースタイル的に、ミランのピルロのような選手を目指しているのであろう。大きく飛躍し、アッズーリにて活躍するチガリーニを一刻も早く観てみたいものである。

アックアフレスカはU-21で16試合10得点、オリンピック代表でも5試合4得点。アッズリーニではこの世代のエースとして活躍した選手である。クラブレベルにおいても2007-2008、2008-2009と2年連続して2桁得点を記録。カリアリのエースとして活躍してきた。昨夏にジェノアへと移籍したが、フロッカリ獲得の対価の一部としてアタランタへレンタルされる。しかしながらアタランタでは全く結果を残せず、フロッカリ、クレスポを放出したジェノアへと冬のメルカートで復帰することとなる。復帰後も目立った活躍を披露することができず、アックアフレスカにとって不満の残るシーズンとなってしまった。しかしジェノアは来季、アックアフレスカを軸に前線を構成することを考えているといわれ、信頼を失ってしまった訳ではない。カリアリ時代のように自信を持ってプレーするアックアフレスカの姿を、来季以降観たいものである。

19歳にしてイタリアチャンピオン、インテルの一員として26試合に出場し、9得点5アシスト。この数字、年齢を考慮すれば立派なものである。しかし、バロテッリはこの活躍を二の次にしてしまうほどピッチ外の話題が絶えず、せっかくの活躍にキズをつけてしまっている印象が強い。そして技術的な点においてというより、精神面においての成長がなかなか見ることができない。才能は誰もが認めるところではあるが、大成するにはメンタルを改善しなくてはならない。バロテッリを評すると必ずこういったものになる。スケールの大きなプレーヤーであるだけに、一刻も早く自分の才能を活かすメンタルを身につけて欲しいものである。

名前を挙げた9名の中で最も期待を裏切ったのがジョヴィンコだろう。ジエゴの控えとしてではあるが、ジョヴィンコの出場機会はある程度与えられるはずだった。しかしながら序盤戦でジエゴが負傷した際、全くもってインパクトのないパフォーマンスに終始したことにより、ジョヴィンコの立場は悪いものへと変わって行った。途中から投入されてもリズムに変化を与えられるジョヴィンコのような選手は切り札として重宝されるものだが、今シーズンは全くの鳴かず飛ばずであった。以前、自分がイタリア人でなかったらもっと多くの出場機会が与えられているだろう。と語ったことのある彼だが、この状況に自信を少し失いかけているのかもしれない。マーケットが開く時期が近づく度に移籍の噂が出るジョヴィンコだが、もう一度レンタルで外に出てみるのもいいかもしれない。早急に結果を残すことを求めずに、少し長い目で見守ることが今のジョヴィンコには最適の薬になるように思えてならない。

前後編に分けて16選手を見てきた訳だが、いかがであったろうか。守備的な選手にポジティブな評価が多かった反面、前線の選手には厳しい評価を下さざるを得なかった。

この世代の選手はまだまだ伸びしろがある。彼らが後々大成する為には、正にこの先2~3年のうちに何を経験するか、どういった環境で過ごすかに掛かっている。移籍の噂がある選手も何人かいるが、自分の持ち味をしっかりと活かせるチームでプレーして欲しいと切に願う。

先日発表されたワールドカップに向けた代表候補メンバーには、16名の中から5選手が名を連ねている。クリッシト、マルキージオは確実。残りの3名は当落線上だが、ワールドカップでは大きな経験を積んでもらいたい。今回のワールドカップでイタリアがタイトルを防衛するのは非常に困難だと思われるが、ファンの方々は今回取り上げた若手選手に注目して観戦されてはいかがだろうか。もちろん、私も同様に彼らの活躍を期待している。

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