数年前まで下部リーグでプレーしていた選手も少なくないチームに、クラウディオ・ラニエリは自信とチームとしての一体感を植え付けた。

「0点に抑えたら、ピザを奢ってやろう」と告げたクリスタル・パレス戦では、チームが無失点を達成。レストランを貸し切って、チーム全員で手作りピザを作った。ラニエリは「ピザ・パーティの後、チームは無失点試合を連発した。偶然だと思うかい?」と笑う。クリスティアン・フックスの誕生日会にも、ラニエリは参加していたという。一度は日にちを間違えて、誰もいない会場にやってきてしまったとのことだが。

選手にピザをご馳走し、誕生日会にも参加する。まるで気の良い親戚の叔父さんのように、イタリア人指揮官はチームに溶け込んでいった。恐らく、ジョゼ・モウリーニョにもペップ・グアルディオラにも、このやり方は合わないことだろう。

「小さなチームだからこそ、仲間のために全力を尽くせ」という彼の言葉が選手達を突き動かすチームを、ラニエリは作り上げていった。レスター・シティというチームについて指揮官は「脳は26個あるが、レスターというチームにとって、心は1つしかない」と誇った。

「前から奪いにいく守備と、引いて待ち受ける守備を使い分ける柔軟さ」と「一撃必殺のカウンター」を武器にしたチームは、プレミアリーグで躍進を果たす。

「相手の方がレスターよりも強い、と言うかもしれない。だが、それをピッチ上で見せてもらうまでは譲る気はない」と語ったラニエリの軍隊は、相手が強豪であっても全く怯むことなく戦い続けた。終盤の守備におけるスタッツは驚異的で、モウリーニョが一時代を築いた頃のチェルシーに匹敵したという。シーズン終盤にはプレミアリーグ直近10年の中でも、トップクラスの守備力を完成させたということになる。

これもピザの力なのだろうか?

まさか、それだけが原因ではないはずだ。

【次ページ】最高の出会いが生んだ奇跡