イラクの強みと性質

ベスト4に進出した2015年アジアカップではラディ・シュナイシル監督がチームを率いており、大会後に彼を解任したイラク。しかしその後暫定的に数人の監督が率いた後、シュナイシル氏が復帰している。

チームの戦術としてはそれほどアジアカップの時代から変わってはいない。前線のスピードを生かしたカウンター攻撃が中心で、まずはディフェンスから入ってくる。

センターバックには体格とフィジカル的な能力を兼ね備えた選手が揃う。

オーストラリア戦とサウジアラビア戦ではアハマド・イブラヒム+サード・ナティークが使われていたので、おそらくそのままで来るだろう。両者ともにボールも繋げてスピードもある大型ストッパーだ。

サイドバックはイラクの強みの一つ。

左サイドのドゥルガーム・イスマイールは今最も注目される選手の1人で、トルコのリゼスポルで活躍している。俊敏性があり、攻撃力に優れる。

右サイドはアル・シュルターのアラー・アリ・ムハーウィが使われる可能性が高い。彼も上下動をこなせるタフで攻撃的な選手だ。

そしてイラクの注目どころは2列目。

「イラクのクリスティアーノ・ロナウド(髪型込み)」と呼ばれるアハマド・ヤーシーンは、今季スウェーデンの名門AIKに加入し活躍中。大柄な体格から繰り出す豪快なドリブルがある。

アメリカ生まれのジャスティン・メラムが怪我をしたことによって、おそらくあの「イラクのギャレス・ベイル」ことアリ・アドナンがウイングで起用される可能性も高いだろう。

ウディネーゼでプレーしている彼は長身でパワフル。ベイルとは全然スタイルは違うのだが、攻撃的で、正確かつ強烈な左足を持ち、無回転フリーキックもある。ユース代表では彼に随分煮え湯を飲まされてきた。

そして近年再び「10番」で起用されているのがアラー・アブドゥルザフラ。2009年のコンフェデレーションズカップにも出場した彼は、引退したユーニス・マフムードやサーラム・シャーキルの後を継いでキャプテンを務める。

彼も「イラクのカカ」と呼ばれているらしく、スタイルとしては2列目からどんどんゴールに向かってくる積極性を武器にしたものだ。

つまりベイルとクリスティアーノ・ロナウドとカカがいるわけであるが、ニックネームなので別にそれ以上のものではないわけで、与太話の一つとして覚えておくと居酒屋あたりで使えるかもしれない。

なお、「イラクのメッシ」ことフマーム・タリク(彼こそタイプはぜんぜん違うが)は残念ながら怪我で不在である。

要するに、イラクで気をつけるべきは、最終ラインの強さと、2列目のスピードとドリブルの仕掛けだ。

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